大阪高等裁判所 昭和25年(う)316号 判決 1950年9月06日
被告人
稗田豊太郎
主文
原判決を破棄する。
被告人を懲役六月及び罰金百万円に処する。
右罰金を完納することができないときは金五千円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
原審の訴訟費用は全部被告人の負担とする。
理由
被告人の控訴趣意第一点について。
(イ) しかし原審第四回公判調書をみると所論の検察官に対する、疋田隆の第一回供述調書については被告人及び弁護人においてこれを証拠とすることに同意しているのであるから原審がこれを証拠とするとして取調べ断罪の資料に供したからとして刑事訴訟法第三二六条第一項に依り適法であつて所論のような違法はなく又同法第一九八条第二項所定の供述拒否権の告知は被疑者を取調るに際しての要件であつてたとえ被疑者と共犯の関係を有する者でもこれを被疑者として取調べる場合がなければその適用はないものと解すべきであるところ右疋田隆の供述調書は同人を被疑者として取調べた場合のものでないから同人取調の際供述拒否権の告知がなかつたとしても何等手続法上の瑕疵なく論旨は理由がない。
同第二点について。
(ロ) 裁判官が同一の証人を重ねて尋問する場合に前回為された宣誓を維持することによつて更めての宣誓手続を省略するも手続法違背とならないことは従来大審院が判例として認めるところであり所論の刑事訴訟規則第一一九条は証人が数名ある場合の規定で訴訟法旧刑事訴訟法第二〇〇条と全く同趣旨であるからこの規定があるの故を以て新刑事訴訟法上宣誓の維持が禁止せられるに至つたものと解することは出来ない。
而して原審第五回公判調書を見ると原審裁判官は再尋問の証人疋田隆に対し宣誓は第二回公判調書の記載を引用する旨告げたとあるがこれは畢竟右宣誓を維持する旨を宣した趣旨に解せられるから論旨は理由がない。(本件は量刑不当により破棄自判)